高校時代、僕はひねくれていた。
学校生活を謳歌するウェイやスポーツマンとも仲良くなれず、その一方で「入試や偏差値だけが全て」と考えて勉強ばかりしているオタクやガリ勉とも仲良くなれなかった。
ウェイでもオタクでもない人間が行き着く先はどこか?
そう。それはサブカルである(偏見)!
こうしてギター部に入った僕は、部室でよく分からない音楽をディグる日々を送った……。
というわけで、たまにはバンドの話でもしようと思う。
「バンドを語る」といったら、いろんな切り口があるけれど、もし僕が「好きなバンドなに?」と聞かれたら、「ナンバガかな」と答えると思うので、今回はナンバーガールとそのフォロワーバンドについて語りたい。
■ ナンバーガールについて
ナンバーガールとは何か?
そもそも、この説明がかなり難しい。
ひとことで言い表せるようなものではなく、各人の強烈なキャラクターによって成立しているからだ。
まあ、一応ジャンル的に言っておくなら、オルタナギターロックということになるだろう。
1995年結成、2002年解散。(なんと2019年に再活動)
まず、ギターボーカルの向井秀徳。
向井の特徴はその独特のMCと、テレキャスター(ギターの種類)による鋭角ギターサウンドである。
「繰り返される諸行無常 よみがえる性的衝動」
「冷凍都市の暮らし あいつ姿くらまし」
というのがいつもの決まり文句だ。
こんなことを語るロックバンドがあっただろうか。向井はやはり偉大である。
ちなみに、若い頃はただの決めゼリフのようなものだと思っていたが、最近(20代後半)になって、向井のMCが「よく分かる」ようになってきた。
そして、ギタープレイに関しては「オレ押さえ」という開放弦を利用した独特なコードを多用する。
ギターがよく分からない人に伝えるなら、1・2弦を押さえないで、3~6弦だけを抑える独自のフォームである。
音楽理論っぽく言うならば、セブンスやテンションコードによって、浮遊感を与えているということだ。
ナンバーガールはその後の邦楽バンドに大きな影響を与え、多数のフォロワーバンドを生み出したのだが、そのフォロワーの特徴として「オレ押さえ」を用いるということは挙げられるだろう。
ちなみに、向井はナンバーガール解散後、ザゼンボーイズというバンドを組んで活動している。こちらもマストチェックだ。
次はリードギターの田淵ひさ子である。
ひさ子はマジでかっこいい。通称カミソリギター。
男性顔負けのプレイとかそういう話以前に、なよなよしたキノコ頭野郎なんか斬り殺されるだろう、というレベルだ。
とりあえず、TATTOOありの動画を見てほしい。
一体どれだけのバンドキッズがひさ子に憧れてジャズマスター(ギターの種類)とブルースドライバー(エフェクター、音をギュイーンとさせるやつ)を買ったのだろうか。
ちなみにであるが、ナンバーガール以降、「テレキャスターとジャズマスター」という一種の様式美が確立したような気がする。有名どころだとtoeとか。
僕も未だに大好物である。シングルコイル万歳。
すげえざっくりピックアップ(音を拾う部分)解説 シングルコイル → 音がジャキジャキしてる。ストラトキャスター、テレキャスター、ジャズマスター。Fenderというギターメーカーに多い。 ハムバッカー → 音が太くてマイルド。レスポール。こっちはGibsonが有名。
続いてベースの中尾憲太郎。通称ナカケン。
ナカケンの特徴といえば、ゴリゴリと歪んだ直線的なピック弾きサウンドである。
ベースは基本的に指弾きかピック弾きに分かれるが、ナカケンのピック弾きは更に独特で、通常の「↓↑↓↑」というピッキングではなく、「↓↑↓↓」という変則ピッキングを多用している。これがまた難しい。
ナンバーガールのベース自体は難しいことをしておらず、譜面に書き下ろせば簡単なものになるのだが、あの迫力を再現するのは安易なことではない。
特に、ナンバガのコピーバンドをしてもベース担当がシャキッとしていないヤツだと、「なんかしょぼいんだよなあ」という事態になってしまうのはあるあるである。
最後に、ドラムス、アヒト・イナザワ。
アヒトといえば、何といってもその手数の多さではないだろうか。
彼らの代表曲である透明少女やOMOIDE IN MY HEADでそのプレイを確認することができる。
ドコドコガシャガシャと、マジでやかましい(褒めている)。
ドラムは裏方に徹するとか、そういうお行儀のよさは一切なく、むしろこのような各人の自己主張がナンバーガールを成り立たせているのだろう。
ちなみに、アヒトは向井に誘われてザゼンボーイズに加入したが、初期の段階で脱退してしまった。
その理由をインタビューでは「カツ丼は好きだけど、毎日カツ丼ばかりだと辛いって感じw」と答えている。
■ おすすめアルバム
ナンバーガールは4つのアルバムを出している。
しかし、初心者だからこそ聞いてほしいのが、ライブ音源を収録したライブ盤である。
『シブヤROCK TRANSFORMED状態』、『サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態』。
とりあえず、これらを聴けば大体ナンバーガールがわかる。もう何回聴いたか分からないぐらい聴いたものだ。
ちなみに、僕が「ナンバーガールで何が一番好き?」と聞かれたら、シブヤの狂って候だと思う。
■ ナンバガフォロワーとは何か
それでは、続いてナンバガフォロワーについて語りたいと思う。
その前に「ナンバガフォロワー」の定義をある程度挙げてみよう。
・シングルコイルのギター
・ジャキジャキとした音作り
・「オレ押さえ」を多用する
・リードやギターソロはコーラスがかかったサウンド(田淵ひさ子的な音作り)
・ベースはピック弾きかつ適度に歪んでいる
・ドラムが暴れている
簡単に言ってしまえば、こんなところだろうか。
それでは、これらの特徴を強く持ったバンドを紹介していこう。
■ ハヌマーン
ハヌマーンはギターボーカルの山田亮一を中心として結成された3ピースバンドである。2004年結成、2012年解散。
そのサウンドはナンバーガール直系であるが、ポストロックやマスロック的なアプローチも加えられ、演奏は非常にハイレベルなものになっている。
(ナンバガのコピーバンドはよく見かけるがハヌマーンのコピーバンドはあまり見かけない。なぜなら、難しくてコピーできないから!)
そして、その歌詞の世界観も唯一無二だ。
向井秀徳の語った「冷凍都市の暮らし」という感覚がベースにありながらも、自意識過剰でニヒルな態度、そしてある種の「せつなさ」が表現されている。
僕は基本的に「歌詞とかわりとどうでもいい」と思っている派なのだが、ハヌマーンに関しては歌詞もぜひ聞いてほしい。
個人的にハヌマーンが僕の人格形成(?)に与えた影響はかなり大きいと思っている。
アルバムは『World’s System Kitchen』と『RE DISTORTION』を聴くべし。
■ フィッシュライフ
ハヌマーンがナンバガフォロワーならば、フィッシュライフはハヌマーンフォロワーとでも言えばいいだろうか。
2012年結成、2018年解散。2013年に「閃光ライオット」という有名な大会で優勝している。
沈黙のサマーが終わるころに、狂っていたのは俺かお前か……。
■ 凛として時雨
時雨は楽曲がアニメのOPになったりしているので、知っている方も多いと思う。
一見ナンバガフォロワーっぽさはあまり感じられないが、初期の音源を聴くと大いに影響を受けていることがわかる。
■ 或る感覚
或る感覚もナンバーガールやハヌマーンのフォロワーを名乗っているバンドである。
ギターボーカルの立花ロンがよくネット上でオラついていて、たびたび炎上などもしていたのだが、そのワチャワチャ感も含めて嫌いじゃなかった。2017年解散。
以下は「下北沢最速のカッティング」を自負する鬼という曲だ。
■ ヒトリエ
ニコニコ動画でボーカロイドの楽曲を投稿していたwowakaが中心となって結成されたバンド。
wowakaはインタビューで「初音ミクがおれの母親ならナンバーガールは父親です」と公言している。
ボカロ的アプローチが目立つが、確かにナンバーガールの影響があることが分かるだろう。
■ cinema staff
シネマスタッフも有名なバンドだ。メジャーデビューをしてからは、アニメ『進撃の巨人』のエンディングテーマもやっていた。
もともと、シネマスタッフは残響レコードというレーベルに所属していたのだが、残響レコードの話をすると、たぶんもう1つ記事が必要になってしまうので、ここでは触れないでおこう。
やはり、シネマスタッフも初期の楽曲を聴くと、ナンバーガールの影響が分かりやすい。
■ SuiseiNoboAz
スイセイノボアズ、というバンド。1stアルバムは向井秀徳の全面プロデュースである。
この曲もいいのだが、4thの『liquid rainbow』もすげえ好き。
■ 鉄腕トカゲ探知機
東方アレンジはなぜかメタルやインストに走りがちなのだが、岸田教団や鉄腕トカゲ探知機はよく聴いた。
サウンドを聴いてくれれば、ナンバーガールやハヌマーンから大いに影響を受けていることが分かるはずだ。
■ おわり
このぐらいで紹介を終わろうと思う。
他ではアジカンやベボベがナンバーガールフォロワーとして有名だが、メジャーなバンドなので紹介しなくてもいいかなということで今回は見送った。
あとはインディーズ特有の焦燥感が好きだから、という理由もある。
それにしても夏になるとナンバーガール系のバンドが聴きたくなるのはなぜなのだろう。
とりあえず、乾杯!
(完)