ニートなら読んでおきたい『天 天和通りの快男児 -アカギ葬式編-』

麻雀漫画『アカギ』を読んだことがあるだろうか。

ギャンブル漫画の第一人者、福本伸行氏による作品である。

神がかり的な博打のセンスと、生や金に執着しない独自の価値観。

勝負そのものや己の信念の貫徹を希求する、主人公アカギによる代打ちとしての裏社会での活躍が描かれる。

「死ねば助かるのに…」「狂気の沙汰ほど面白い…!」などの有名なセリフは耳にしたこともあるかもしれない。

福本作品の魅力とは、ギャンブルそのものが本質なのではなく、ギャンブルという極限状態によって描かれる人間の在り方だと思う。

命や莫大な金の懸かったギリギリの状況におけるキャラクターたちの振る舞いや、人生哲学が読者を惹きつけてやまないのである。

さて、この麻雀漫画の代名詞とも呼ばれる『アカギ』であるが、実は『天 天和通りの快男児』という漫画のスピンオフ作品であるのだ。

『天』に登場する伝説の博徒、それが「赤木しげる」であり、この赤木の青年期が描かれているのが、『アカギ』なのである。

今回、紹介したいのはこの『天』の16~18巻、「赤木しげる葬式編」だ。

名前の通り、ここでは赤木の葬式が描かれる。麻雀漫画であるのに、ほとんど麻雀が登場しないという異例のエピソードである。

しかし、それゆえに麻雀を知らぬ人でも読みやすく、なんならそれまでの『天』1~15巻や『アカギ』を読んでいなくても、赤木しげるの人生観や死生観を味わえるものとなっている。

この赤木の「何にも依らない生き方」や「自身の信念に沿って生きる姿」はある種のフーテン・風来坊的な在り方の極致でもあり、ニートにとっても非常に参考になるのではないだろうか。

特に「停滞している人間」や「不自由を感じている人間」に対しても、強いメッセージが感じられる。

以下、完全にネタバレ注意。

 

『天 天和通りの快男児』のあらすじ

物語は天 貴史(てん たかし)と井川 ひろゆきが出会う所から始まる。

ひろゆきは麻雀における「理」、すなわち、確率を重視するタイプであり、その高い計算能力を生かして雀荘で一般人相手に荒稼ぎをしている受験生であった。

そこで街の何でも屋をしている天が呼ばれることになり、天は素人丸出しの麻雀を繰り広げるのだが、最後の最後に停電による「天和 九蓮宝燈」のイカサマで大逆転する。

ここから天とひろゆきの付き合いが始まることになった。

最初はおちゃらけているだけの天だと思われていたが、実はとても麻雀が強いことが判明していく。

顔の傷も、用心棒や代打ちをしていく中で、相手のメンツを立たせる為にわざと暴力を受けているという、義理人情の現れであった。

そして、代打ち稼業をしていく中で、天とひろゆきは、伝説の博徒、赤木しげると激突する。

赤木の才気に圧倒される天であったが、赤木は1回の半荘の負けを理由に代打ちを辞退。勝ちを拾うことになる。

しかし、その後、ひろゆきは、天と沢田(ひろゆきの雇い主、やくざ)によって、「戻れる人間は表社会に戻るべき」だと諭され、袂を分かつことになるのであった。

 

出典:福本 伸行『天』
出典:福本 伸行『天』
出典:福本 伸行『天』

 

2年後、ひろゆきは大阪にいた。大学生として暮らしていたが、内心では天や赤木のような麻雀勝負を求めていた。

そして、大阪の雀荘で出会った麻雀打ちの健に「東」の裏プロ達と「西」裏プロ達が雌雄を決する「東西戦」があることを教えてもらう。

東西戦はヤクザの代理戦争ともいえる莫大な利権が懸かった危険な勝負であった。

「東」の頭が天であることを知ったひろゆきはメンバー入りを志願するが、あるテストによって「裏で戦うには真面目すぎる」ところを指摘されてしまう。

一度は断られたひろゆきはであったが、その後「なりふり構わない」ような手段と姿勢を見せて、執念で東チームのメンバーに参加入りを果たした。

 

出典:福本 伸行『天』
出典:福本 伸行『天』
出典:福本 伸行『天』
出典:福本 伸行『天』

そして、東西戦。東の裏プロと西の裏プロが激突する。

東には、天やひろゆき、赤木に加えて、ガン牌(目印のイカサマ)を武器する浅井 銀次、麻雀寺の住職と呼ばれる金光 修蔵などが参戦した。

一方、西からは、関西屈指の暴力団組長である原田 克美や、赤木と並び裏世界最強と呼ばれる僧我 三威などが立ち塞がった。

裏稼業のトップ同士の争い、特にひろゆきは苦戦を強いられることになるが、赤木による助言によって戦いの中で成長していく。

予選や決勝を経て、最終的には天と原田の一騎打ちを迎えることになる。そして、東チームは勝利を獲得した。

しかし、その一方で、ひろゆきは天才たちとの間に決定的な差を感じてしまい、代打ち師として生きていくことを諦めてしまうのであった。

ここからが葬式編となる。

…あれから9年後、ひろゆきはサラリーマンとして、無気力で燻っているような日常を送っていた。

しかし、何気なく手にした新聞、そこに「赤木しげるの告別式」の記載を見つける。

あの赤木しげるが死ぬはずがない…!

戸惑いながらも記載された電話番号にかけると、それに出たのは麻雀寺の金光であった。

「ひろ…、(同姓同名の別人ではなく)その赤木しげるだ…!」

 

翌日、ひろゆきは告別式が行われる岩手県 清寛寺に向かうことになる。

焼香を行い、赤木の眠る棺桶を確認する。けれども、そこには何か違和感があった。

そんなことを考えていると、葬儀の関係者から、夜まで残って欲しいと告げられる。

この葬儀は特別であり、変則的に告別式の後に親しい者たちで通夜を行うのだという。

ひろゆきは疑問を抱きながらも、案内された部屋でひとり待ち続ける。

そして、午後8時、ひろゆきの前に喪主として現れたのは「赤木しげる」だった。

 

「やっぱり…! 赤木さんっ…! なんですこれはっ…! 冗談が過ぎますよ…!」

「ククク… それが冗談じゃねえんだよ どうもこうもねえさ…! 今日は俺の葬式なんだ…!」

そう告げると、赤木は語りだす、いわゆる生前葬などではない、俺はこれから数時間後、安楽死する手筈になっていると。

困惑するひろゆき。赤木に詳細を聞こうとするが、同じことを喋りすぎて食傷気味、あとは控え室の奴らに聞いてくれという。

赤木に案内された部屋の障子を開けると、そこに居たのはあの東西戦の顔ぶれであった。

 

東からは「天」「銀次」「金光」「鷲尾」「健」。

西からは「原田」「僧我」が呼ばれていた。

そして、ひろゆきは金光による説明を受ける。

赤木はアルツハイマー病に蝕まれているということ。

病気の進行は初期から中期まで進み、まもなく廃人状態を経て死を迎えるということ。

そして、今現在「赤木しげる」らしさを保っているのは奇跡のようなものであり、自分を失ってしまう前に、自ら人生の幕を閉じようとしていること。

この通夜は赤木にとって「最後の真剣勝負」だった東西戦のメンバーと最期に1人ずつ対話をし、逝くことが目的だったのだ。

寺の離れに赤木はいる。

金光は言う、「最初はわしが行く。各自、引き止めるか、何も言わず送り出してやるか。考えておいてくれ」と。

金光の後は健と鷲尾が引き止めを行うが説得は失敗。順番は銀次に回ってきたのであった。

赤木と銀次 – 「死」について考える

出典:福本 伸行『天』
出典:福本 伸行『天』

(浅井銀次…東西戦における東陣営のメンバー。「三色銀次」の異名を持つ、ガン牌の達人である。しかし、実はその身体は…)

 

銀次は赤木のいる離れをノックする。

赤木:「おうよ…」

入室する銀次、辺りを見渡す。

銀次:「ふ~ん… なるほど いいとこじゃねえか…!」「死を迎える部屋としてはこざっぱりしていて…」

赤木:「フフ… そうかもしれねえ… 言われるまで考えもしなかった」「こりゃあ 金光に礼を言わなきゃいけなかったな」

一杯貰うぜ、とウィスキーを注ぐ銀次。

銀次:「特別な事じゃねえっ…! そう言いたいんだろ?」

「みな、死や病を忌み嫌いすぎる 死ぬ事は時に、救いですらある…!」

赤木:「ククク… まあ、そんなところだ 確かにみんな、少し悲劇的に捉えすぎている」

「考えようによっちゃあ 『死のう』って決めて『死ねる』なんて 理想的なことだぜ」

「たいていは薬漬けの末 訳の分からぬうちに死んじまうんだからな…」

出典:福本 伸行『天』

銀次は赤木を引き止めるのではなく、死の持つ一面について肯定をする。そして、こうも続ける。

銀次:「でも… そう分かっていても やっぱり『死ぬ』と決めて『死ぬ』なんて 普通はできねえのさ」

「パニクって訳も分からず目の前の苦しみから逃れようと死ぬヤツはゴマンといる」

「しかし、あんたは正気だ 正常な意識でちょっと隣に行ってくるみたいに『死ぬ』って言ってる」

「これは誰にもできることじゃねえ」

赤木:「ククク… そうかな」

銀次:「これは… ちゃんと生きてきたヤツでなきゃ辿り着けない… 若い頃からズーッと『死』を隣に置いてきた者だけが持つ感覚…」

「そして、今回みたいなことを段取ってくれる仲間」

「この両方を手にした者にしかできない」

「普通『死』までにその地点に辿り着けない…!」

「だから、本当にめでたく羨ましい…」

「しかし、それでも… 赤木…」

恐かねえか…?

出典:福本 伸行『天』

赤木は銀次の不安げな表情を見据える。

赤木:「ククク…」

銀次:「どんな気分だ…? これから死ぬ…って」

赤木:「おいおい」

銀次:「だって心配じゃねえのかよ 赤木…!」

出典:福本 伸行『天』

一服する赤木、そして赤木の考える死生観が語られる。

赤木:「まぁ… 死んでもし 全てが消えるのなら それまで…

まったくゼロなんだから… 心配するにはあたらない

「そして、もし… 何かが… 言うなら魂…?」

あるいはある種の意識… 『生』が残っているとしたら それは痛い・痒いという神経… あのしちめんどくさい体や脳とつながってねえんだから どうもこれは生身の今より 数段過ごしやすそうだ…

つまり… 意識が消えようと残ろうと… OK

「どっちに転んでも… 心配するにはあたらない…」

「フフ… 楽チンさ…」

出典:福本 伸行『天』

神妙な面持ちで話を聞く銀次。

銀次:「赤木… その『魂』… 『意識』みたいなものは… あるのかな…?」

赤木:「ククク… まるでねぇ…とは言い切れねえんじゃねえのか…」

「俺たちが元々… 無生物だったことを考えれば…」

銀次:「無生物…?」

赤木:「そうさ…」

「人はみな昔砂つぶ… 海に溶けた塵だの砂利だの淀みみたいなものだったんだろ」

「そこから原始的な生命が生まれ 進化に進化を重ね 人間になった…」

「だとすれば つまり… 無生物の中に生き物の元 種があったってことになる」

「その種ってのは… なんというか 乱暴に言っちまえば ある『意志』のようなものだったんじゃないか…」

「つまり、無生物の中にある… 生命になろう…っていう気持ちとでもいうか…」

「その気持ちがあったから 無生物は生き物に変わりえた」

「あるいはこんな風にも考えたりする」

「要するに砂や石や水… 通常俺たちが生命などないと思っているものも」

「永遠と言っていい 長い時間のサイクルの中で変化し続けていて」

「それはイコール 俺たちの計りを超えた…」

「生命なんじゃないか…と…!」

死ぬことは… その命に戻ることだ…!

銀次:「…」

「消滅しねえのか…?」

赤木:「ククク… 消滅しようがねえのさ すでに今あるものは 存在し続ける 形を変えてな…

「そういう意味じゃ… まあ… 不死だわな…」

出典:福本 伸行『天』

赤木の話に聞き入る銀次。

そして、ボロボロと涙を流し出す…。

銀次:「うう… うっ…!」

「…そんな話をもっとしてくれ…」

「もっと…!」

「…この前…再発して…」

「2年なんともなかったんだが…」

「この前ついに移転した 今度はリンパに もう手術は効かない…」

「化学療法も効果は期待薄…!」

わしは…」 「癌で…

「赤木っ…! …怖いんだ これで終わりかと思うと… もうすぐ…」

「死んじまうかと思うと…!」

「わしは…」

赤木:「大丈夫…」

「おっかなくなんかねえんだよ…!」

俺が先に死んでやるっ…!

綺麗に死んでやるから…!

「安心しろっ…!」

銀次:「赤木っ…!」

赤木:「だから… 受け入れてやれ 死をっ…!」

「出来る限り… 温かく…」

「迎え入れてやれ…!」

俺の感覚じゃ 死ってヤツは… そう悪いヤツじゃない

「出来るさ… お前にも出来る」

俺が見てきた限りじゃ あったかい人間はあったかく死んでいけるんだ

「おっかなくなんかねえんだよ…! 銀次…」

銀次:「赤木ッ…!」

出典:福本 伸行『天』

…赤木の言葉に体を震わせ大粒の涙を流す銀次。離れには嗚咽する声が静かに響くのであった。

そして、銀次が控え室に戻る。赤木の決断を引き止めることはできなかった、と皆に告げる。

「ククク… あの男は話し合いで決意を変えるような男やない…!」「そこの牌を持ってきてくれ…! わしが止めてくるっ…!」

出典:福本 伸行『天』

5番手は僧我。かつて裏社会最強と呼ばれていた男であるが、赤木の登場によって、その地位を奪われたという因縁を持つ。

赤木との決着をつけるためにも、麻雀牌を抱えて離れに向かうのであった…。

この「赤木vs僧我」は17巻のメインであり、哀しくも美しいエピソードであるが、ここでは省略させてもらおうと思う。

赤木の勝負師としての輝き・偏った生き方を各自確認してほしい。

赤木と原田 – 「成功」について考える

出典:福本 伸行『天』
出典:福本 伸行『天』

(原田 克美…東西戦における西陣営のメンバー。関西屈指の暴力団組長でもある。)

 

僧我との勝負を終え、面会人は天・ひろゆき・原田を残すのみとなった。

一服する赤木の元に訪れたのは、ヤクザの部下を多数引き連れた原田の姿であった。

原田:「いかに他人の思惑・評判など… 知ったこっちゃねえ… 赤木といえども…!」

「ここまで大事になったら もう自分からの撤回は無理…!」

「が… 安心しろ…! 赤木…!」

「俺がお前を拉致するっ…!」

出典:福本 伸行『天』

原田は部下を使い、強引に赤木を拉致することを考えた。

死にたいと言っても、本当は生きたい気持ちもあるはず。

「拉致された」という形であれば、赤木のメンツも保つはずだと。

…しかし、赤木はそんなことをするなら「舌を噛み切る」という。

部下は「ハッタリだ」というが、原田には、あの赤木しげるがこの土壇場で自分の言葉を裏切るとは思えない。

結局、赤木と原田を残し、部下は撤収することになった。

赤木:「ククク… 助かったよ… 出来ることなら… そんな酷い死に方は避けたかった…」

「キライなんだ… 痛かったり… 血が出たりするのは…!」

原田:「ちぇっ…! やっぱり… さらっちゃえばよかったかな…」

赤木:「ハハハッ…! かもしれねぇな…!」

出典:福本 伸行『天』

原田は言う、ここで本当に死なれたら天やひろに一生恨まれてしまうと。

そして、こうも切り出した。

原田:「だがよ… ヤボな念押しで… 気が引けるが… お前本当に…」

かけらも… ただの1%も… 生きる気ねえのかい…?

赤木は少しの間を置いて答える。

赤木:「ククク… 『1』どころか… 『3』はあるだろうよ…!

原田:「え…?」

赤木:「3%は生きたい… 未練がねえわけじゃねえさ…!」

原田:「おいおいっ…! だったら…」

赤木:「原田… 仕方のない『3』なんだ…!

原田:「え…?」

赤木:「生きてる以上… 生きたいという気持ちは完全には消せない…!」

「『3』ぐらいは混ざる まるっきりスッキリってわけにはいかねぇ… どう頑張っても…」

「なら… これはもう… 甘んじて受けるしかない…! そう楽には死ねないと…!」

「これが死の味と… 観念するしかない…!」

出典:福本 伸行『天』

困惑する原田に対して赤木はこう続ける。

どうしても人間は混ざってしまう。死のうとしても生きたい気持ちが何%か混じってしまうと。

さらに言えば、生きている時にも死にたい気持ちは混ざっていると。

それはまさにギャンブル。大穴に有り金を突っ込むときのような。

学者に言わせれば、それは「生を求める心の変形」だと言うことだが、赤木には確かにあった。

破滅そのものを求めてしまうような希求が。それがどうも相手の調子を狂わせてきたのではないかという。

赤木にとって、生と死とは濃度。コインの裏表のようなものではない。

ウィスキーの水割りの濃度のようなものであるのだと…。

原田:「ぐっ…! 何言ってやがる… 分かんねえよ…」

「濃いだ 薄いだ 3%がどうしたこうした… そんなもの分かんねえ…!」

「いいじゃねえか…! 生きたきゃ生きりゃあっ…!」

赤木:「ククク… まあ… 分かんねえだろうな…」

「お前は積む人間だから分からねえ…!」

原田:「はぁ…?」

赤木:「入ってきた時…すぐ分かった…!」

「フフ… 多分お前はこう考えている…」

「アルツハイマーになんかなっちまって… なんて赤木しげるはツイてない… かわいそうだと…!」

「だろ…?」

原田:「……」

赤木:「ところが… 実はそうでもねぇ…! あっさりそう決めつけられちゃ ちょっと不愉快だ…」

俺からすりゃあ… 原田… お前の方がかわいそうだ…!

原田:「はぁ…?」

「かわいそう…?」「どうして…?」

赤木:「簡単だ お前も気づいているだろう… 薄々は…!」

ろくに生きてねえっ…!

お前は 今 ろくに生きてないっ…!

「苦しむぜ… それじゃあ… 死の際… 死の淵で…!」

出典:福本 伸行『天』

赤木の発言に動揺が隠せない原田。

しかし、己の生き方を否定されたことはプライドが許せない。

原田:「どういう事だ…? あ~?」

「かわいそうとか… 苦しむとか…」

「ろくに生きてねえとか… 何言ってんだ…?」

「まるで分からねえっ…!」

赤木:「ククク… だから… 積み過ぎたってことさ…」

原田:「? 積む…?」

赤木:「お前は成功を積み過ぎた…!

原田:「… はぁ~?」

「おいおいっ…! 何を言い出すんだ…?」

「悪いってのか…?成功が…?」

「『失敗してろ』とでも言うのか…? 『勝つな』とでも…!」

赤木:「そうは言わねえ 勝つこと… 成功は必要だ…! 生きていく以上…」

ただ 俺は『成功』を少し積んだら すぐ崩すことにしてきた…!

原田:「え…?」

赤木:「実は『成功』はなかなか曲者でよ… 一筋縄ではいかない代物…!」

「最初の1つ2つは まあいいんだが… 10・20となると もう余計…」

「体を重くする贅肉のようなもの… それをお前はいいやいいやで 無用心に積み過ぎた…!」

「動けねぇだろ…? お前今… 動けねぇだろ…? 満足に…!」

出典:福本 伸行『天』

赤木の言葉に硬直する原田、そして赤木はこう続ける。

赤木:「まあ… 最初はある意味必要な『成功』だった… 勝つことによって人の命は輝き 光を放つ」

「そういう生の輝きと成功は最初つながっていた…!」

「なのにどういうわけか… 積み上げていくと… ある段階でスッ…っとその性質が変わる」

成功は生の『輝き』ではなく枷になる」「いつの間にか成功そのものが… 人間を支配… 乗っ取りにくるんだ…!

「『成功』が成功し続ける人生を要求してくる…!」

「本当は… あえてここは失敗をする…」

「あるいはゆっくりする…」

「そんな選択だって人にはあるはずなのに…」

「積み上げた成功がそれを許さない…!」

「縛られている… まるで自由じゃない…」

「それは何でもできそうに見える 関西で1・2位を争う暴力団の頂点…」

「原田克美でも変わらないっ…!」

原田:「ぐっ…!」

赤木:「どんなに金や権力を手に入れたところで… 実は窮々としている…!」

「『成功』ってヤツは… 人を自由にしないんだ… ハダカを許さない… 装うことを要求してくる…!」

「つまり… 成功者… 大物らしく振る舞うことを要求してくる…!」

「ましてお前は暴力団の組長… さぞや窮屈だろうぜ…!」

「悲しいときも泣けず… おかしくても笑えず… 怒りが込み上げても安々と爆発なんか出来やしねえ…!」

「我慢をしているはずだ… 相当…!」

「そんなストレスのかたまりみたいな日々を お前は営々とこなしている スケジュール通り…!」

「なんだそれ…?」「まるで分からねえ…!」

「ありのままの自分がどこにもねぇじゃねぇか…」

「金や家来をいくら持っていようと… そんなもん俺は毛ほど羨ましくねぇ…」

「生きていると言えるのか…? お前… それで…!」

出典:福本 伸行『天』

 

…原田は赤木の部屋から離れ、縁側で煙草を吸っていた。

(「棺さ…!」)(「お前は『成功』という名の 棺の中にいる…!」)

(「動けない… もう満足に… お前は動けない…!」)

(「死に体みてえな人生さ…!」)

原田は1人、煙をくゆらせながら赤木の言葉を反芻するのであった。

ここで一旦、考えてみたい。確かに、赤木の言葉は正しいように思える。

過度な成功は己の自由を縛り付けるかもしれない。

「成功は少し積んだら すぐ崩す」

…けれども、

最初の一歩さえ、成功できないもの。

チャレンジする勇気の持てないもの。

そもそも能力がないもの。

そんな人たちはどうすればいいのだろう?

こういった不満や疑問が浮かび上がってきてもおかしくはない。

しかし。

それに対する赤木の答え、福本氏の答えが次のエピソードなのではないか?、と自分は思う。

原田が控え室に戻る。赤木の決断を翻すことはできなかった、とメンバーに伝える。

しかし、原田は「突破口のようなもの」「僅かだが生きたいという希求」を感じたとも告げるのであった。

そもそも、赤木がこんな葬式を開くこと自体が少しおかしい。本来なら、野垂れ死にでも本望…!という男であると。

とはいえ、俺には救えない。その突破口が見えない、という限界を原田は感じていた。

こうして残りの説得は天とひろゆきに委ねられる。

赤木の命を救うため、ひろゆきは7番手として、赤木のいる離れに向かうのであった。

赤木とひろゆき – 「熱い三流なら上等よ…!」

出典:福本 伸行『天』
出典:福本 伸行『天』

(井川ひろゆき…この作品の準主人公。計算や確率を用いた「理」の麻雀を得意とする。9年前の東西戦では、赤木に師事することによって大きく成長したが、それと同時に己の限界を知り、代打ち稼業から退く。その後、サラリーマンとして燻ったような毎日を送っていた。)

 

どうすれば、赤木しげるを立ち止まらせることができる…?

それを考えながら廊下を歩くが、一方に答えは出ない。

そして、とうとう赤木のいる離れに到着する。

ひろゆきは席に着くが、2人の間には沈黙が続いていた。

赤木:「……」

ひろゆき:「……」

赤木:「ククク… ハハハ…! なんだ?なんだ? 押し黙っちまって…」「企んでやがるのか…? 何か…」「フフ…」

発する言葉がなかなか見つからないひろゆき。赤木を死なせる訳にはいかない。

どうすれば、その決心を翻すことができるのか…?

赤木:「…… ククク… おいおい!」「そんなんじゃ何も始まらねえっ…!」「何でもいいから… 話してみ…!」

「話せば動き出す…」「その動きの中で随時考えていけばいいんだ」「ラチがあかねえとはまさにこの事…!」

ひろゆき:「…… そりゃあ そうですが…」

出典:福本 伸行『天』

 

赤木:「やれやれ… じゃあこうするか…!」

そう言うと、赤木は僧我との対戦に使用した麻雀牌に手をかける。

赤木:「ここに1~9までのピンズが2枚ずつ 計18枚ある…!」

「つまり… イーピン(ピンズの1)は2枚ってことになるんだが…」

「このイーピンを2連発で… 今お前が引いたら… その奇跡に敬意を表し…」

生き残ろうではないか…!

この提案にひろゆきは喜びと衝撃を受ける。

ひろゆき:「マ…マジですか…!?」

赤木:「ただし… もし2連発で引けなかった場合は…」

お前の腕を一本貰おう…!

…ひろゆきは再び別の衝撃を受ける。

ひろゆき:「は…? マ…マジですか…?」

赤木:「あぁ…」「どうする…?」「ククク…」

出典:福本 伸行『天』

そして、ひろゆきはしばらく考え込む。

18牌から2連発でイーピンを引くということは、1回目が「2/18」、2回目が「1/17」の確率。

それが2回続くのだから、「2/18」×「1/17」…。つまり、「1/153」となる。

とてもじゃないが、腕一本を賭けられる確率ではない…!

 

そんな中、悩み込むひろゆきの様子を見て、赤木は笑い出す。

赤木:「ハハハッ…! おいおいっ…! 何考え込んでんだよ お前…!」

「いいかひろ… 俺を生かしたいと思うなら こんなもん… 即受けだよ… 即受け…!」

ひろゆき:「はぁ…」

赤木:「… いいかひろ 考えるな…! 『負け』の可能性なんて…!」

「今回みたいな場合は ただ『勝ち』に賭けりゃいい…!」

ひろゆき:「し… しかし…」

赤木:「負けた時は… 反故にしちまえばいい…!」

「腕一本なんてバカな取り決めは…!」

ひろゆき:「え…? 反故にですか…!?」

赤木:「そうさ… 死んでいく奴との約束なんて 知ったこっちゃねえって反故にすればいい…!」

「お前にはそういう… ズルいというか… いい加減なところがない…!」

出典:福本 伸行『天』

そう言うと、赤木は手に隠し持っていた牌を親指で弾き上げ、テーブルに晒す。

ひろゆき:「え…? どうして牌…」「!」「まさか…!?」

赤木:「ククク… そのまさかさ…!」

出典:福本 伸行『天』

そこにあったのはイーピン。

ひろゆきは腕のリスクに気を取られ、実はテーブルの牌数が17枚であったことに気づいていなかったのである。

ひろゆき:「うっ…!」

赤木:「ククク… かくの通り…! 乱戦よ…! 勝負事はたいてい…!」

「通用しない…」「お前の生真面目さは…!」「足を取られて終わりだ…!」

ひろゆき:「…」

赤木:「だからもっといい加減になればいいのだ… 臨機応変… 柔軟になればいい…!」

出典:福本 伸行『天』

 

ひろゆきを見つめ直し、赤木は語り始める。

赤木:「真面目であることは 悪癖だ…!

「かくあらなければならない… なんて考えは 悪癖だ…!」

「それがお前を止めちまった… 9年間も…!」

ひろゆき:(ううっ…!)

(どうして…? この人はそんな事を…!)

(どうしてこの人は知っている… あの東西戦以降… 俺のこの停滞を…)

ひろゆき:「ぐっ…!」「赤木さん… どうしてそんなこと言いだすんですか?」「唐突に…! 9年間止まっていたとかなんとか…」

赤木:「ククク… どうもこうもねぇ…」「ただそう感じたんだ…!」

ひろゆき:「そんなっ…!? なんです…? それ…!」

赤木:「… 感じたんだ… 今日会って 一見… 朧だな…って…」

ひろゆき:「朧…?」

赤木:「命が煙っている…!」「お前の全体から まっすぐ生きていない淀み… 濁りを感じた…!」

「苦戦の匂い… 立ち止まりを感じたっ…!」「たぶんお前は…」

ひろゆき:「そんなっ…! よしてくださいよ…! 勝手に…!」

「それって印象じゃないですか…? 根拠も何もないっ…! ただの印象…!」

赤木:「フフ… そう印象だ…!」「でもそれで充分… おおよそ その人間の状態を誤らない…!」

「なーに… 難しく考えることはないんだ…!」「命ってのはすなわち… 輝きなんだから」

「輝きを感じていない人間は命を喜ばしていないんだな… ってすぐ分かる…!」

「…どうして命が喜ばないかといったら… これまたひどく単純な話…!」

「要するに… 動いていないのだっ…!」

ひろゆき:「はぁ…?」

赤木:「命の最も根源的特徴は活動… 動くってことだ…!」「動かなくなったら 即 死なんだからよ…!」

「それは微生物から人間まで変わらない…!」

「お前はあの東西戦から 約9年…」「半死っ…!

ひろゆき:「うっ…!」

赤木:「わけ分からないんじゃないか…? 自分でもこの9年… 何をやってるんだか…」

出典:福本 伸行『天』

 

赤木の強烈な指摘に言葉を失うひろゆき…。

しかし、ぽつりと小さく口を開き始めた。

ひろゆき:「分からない… 赤木さんには分からない…!」

赤木:「… 分からない…?」

ひろゆき「そう… へこたれる人の気持ちが分からない…!」

「やろうと思っても 最初から萎えてしまう…」「心ならずとも停滞してしまう…」

「そんな人間の気持ちが分からない…!」

なぜなら… なんでも出来る人だから…!

赤木:「… フフ…」「そうかな…?」

ひろゆき:「そうです…!」

赤木:「けどよ… 仮にそうだとしても… そういう才能みたいなことと… 命は関係ねえだろ…!」

「いわゆる凡庸なヤツの中にも 輝いている者は沢山いる…! だろ…!」

ひろゆき:「そりゃあ…」

赤木:「いるさ… いくらでもいる…!」「楽しむか… 楽しまないかだけだ…!」

ひろゆき:「楽しむ…?」

赤木:「勝負するってことよ…!」

出典:福本 伸行『天』

 

しかし、ひろゆきは大きく首を振る。

ひろゆき:「だから… それが無理なんですって…! 赤木さん…!」

「勝負を楽しむなんていうのは あくまで勝つ人の話で…」

「赤木さんや天さんの麻雀には 届かないと分かってしまった以上…」

「もう勝負なんて… 勝負を楽しむなんて不可能でしょ…! そんなこと…!」

「ただ傷つくだけじゃないですか… そんなことしても…!」

赤木:「そうかな… 案外そうじゃないんだけどな…」「まあいいや… そこはひろの言う通りだとしよう…!」

「しかし… そんなに悪いかな…? 傷つくって…!」

ひろゆき:「え…?」

赤木:「思うようにならず… 傷つくっていうか… イラつくっていうか…」

「そういうの… 悪くない…! まるで悪くない…!」「俺はいつもそう考えてきた…!」

「痛みを受け入れれば てめえが生きてるってことを実感できるし…」

『傷つき』は成功の素… 最初の一歩となる…!

「大抵の奇跡… 偉業は… 初めにまず傷つき… そのコンプレックスを抱えた者が 通常では考えられぬぐらいの集中力や持続力を発揮して… 成し遂げるものだ…!」

「つまり… 天才とか言われる連中の正体は… みなその類の異常者…!」「さらりと生きてないっ…!」「あいつらさらりと生きてない…!」

ひろゆき:「…」

赤木:「結局… ハナっから『勝つ人』… 『負ける人』なんていないんだ…!」

「結果現れるだけ…! 勝ったり負けたりが…!」

「決めるなよ…!」「自分が勝てないなんて… 決めるなよ…!」

ひろゆき:(うっ…!)

出典:福本 伸行『天』

 

赤木:「だいいち… いいじゃないか… 仮に負けても…!」

ひろゆき:「え…?」

赤木:「『何か』をして 仮にそれが… 失敗に終わってもいい…」

ひろゆき:「そ…そりゃあ… ちょっとした失敗だったらいいですよ…!」

「でも大きく人生そのものに関わる… 失敗ってのは…!」

赤木:「それもいい…!」

ひろゆき:「え…?」

赤木:「世間でいうところの 失敗の人生もいい…!」

ひろゆき:「バカなっ…! メチャクチャッ…!」

「どこがいいっていうんですか…? そんな人生の…!」

「失敗の人生っていったら… つまりその…」

「誰にも認められず… 軽蔑や貧窮… そんな人生ってことでしょ…!」

赤木:「ククク… そいつは嫌だなぁ…」

ひろゆき:「でしょ…! そんなハメに陥るぐらいなら… まだ今の方がまとも… っていうか… それなり… っていうか…!

出典:福本 伸行『天』

このひろゆきの発言に赤木はピーンと反応する。

 

赤木:「… やっぱりそこか…」

「今ひろは 『今の方がまとも』って言ったが…」

「その『まとも』って何…?」

ひろゆき:「え…?」

赤木:「平均値… 世間並ってことか…? そういう恥ずかしくない暮らしってことか…?」

「それだぜ お前を苦しめているものの正体って…!」

「お前は その『まとも』… 『正常であろう』っていう価値観と 自分の本心… 魂との板挟みに苦しんでいたんだ…!」

考えてみろよ 『正しい人間』とか 『正しい人生』とか…」「それっておかしな言葉だろ…?

ちょっと深く考えると 何言ってんだか分からないぞ… 正しい人間… 正しい人生なんて…! ありはしないんだって… そんなものは元々…!

「それは時代時代で必ず表れ… 俺たちを惑わす… 暗雲…!」

「俺たちはその幻想をどうしても振り捨てられない…! 一種の集団催眠みたいなもん…! まやかしさ…!」

「そんなもんに振り回されちゃいけない…! とりあえずそれは捨てちまっていい…」

「そんなものと勝負しなくていい… そんなものに合わせなくていい…!」

つまり… そういう意味じゃ… ダメ人間になっていい…!

ひろゆき:「うっ…!」

赤木:「話しておきたかったんだ… 今日それだけは… ひろに…!」

「フフ… いかにもお前… そのへんに引っかかってそうだったからよ…!」

ひろゆき:「赤木さん…!」

赤木:「さぁ…! もう漕ぎ出そう…!

いわゆる『まとも』から放たれた人生に…!

出典:福本 伸行『天』

 

面談は終了し、ここからはひろゆきの回想となる。

赤木:「無論… 気持ちは分かる…!」

「誰だって成功したい…! 分かりやすい意味での成功… 世間的な成功…!」

「金や地位 名声… 権力 称賛… そういうものに憧れる…」

「けどよ… ちょっと顧みれば分かる… それは『人生そのもの』じゃない…」

「そういうものは全部… 飾り…!」「人生の飾りに過ぎない…!」

出典:福本 伸行『天』

 

赤木:「ただやる事… その熱… 行為そのものが… 生きるってこと…!」

実ってヤツだ…!

「分かるか…? 成功を目指すな…と言っているんじゃない…!」

「その成否に囚われ… 思い煩い… 止まってしまうこと 熱を失ってしまうこと…」

「これがまずい…! こっちの方が問題だ…!」

「いいじゃないか…! 三流で…!」

熱い三流なら 上等よ…!

「まるで構わない… 構わない話だ…」

「だから… 恐れるなっ…!」「繰り返す…! 失敗を恐れるなっ…!」

出典:福本 伸行『天』

 

「うっ…!」「うぐぐっ…!」「ぐっ…!」

寺の縁側で1人涙を流すひろゆき。

彼は赤木を救おうと面談に向かったが、その逆に、救われてしまったのはひろゆきの方であった。

人生の実は… ただ生きることの中に…。

 

そして、その後、赤木の生死は主人公である天に託される。

「天はどのような説得を試みたのか?」

「赤木は死んでしまうのか?それとも生きることにしたのか?」

「ひろゆきはその後どうしたのか?」

これ以上を述べるのはやめておこうと思う。

気になった方は、ぜひ手に取って読んでみて欲しい。

ちなみに、自分はレンタルで『天』と『アカギ』を読破したが、この葬式編が好きすぎて、16-18巻だけは電子書籍版を購入している。

そして、野暮な記載かもしれないが、福本氏は決して安易に自死を勧めるものとして、この話を書いたわけではない、ということには注意されたし。

この内容については天の18巻の後書き(但し、書籍版のみ)に詳しく書かれている。

 

葬式編は全体を通じて素晴らしいと思うが、今回は特に印象的だった「銀次」と「原田」と「ひろゆき」のエピソードを紹介させてもらった。

非常に長くなってしまったが、最後に赤木の生死観や人生哲学をまとめて終わろうと思う。

 

・死んだとしても、全てが消えるのならば、何も心配にはあたらない。

・仮に「魂」のようなものが残るとしても、それは今のめんどくさい身体と繋がっていないのだから、今よりとても楽だろう。

・海の中の塵や淀みから生物が誕生したことを考えると、ある種の「意志」のようなものが存在していてもおかしくないはずだ。

・さらに、我々が無生物だと考えている石や海は、長い時間のサイクルで考えれば、人間の計りを超えた「生命」なのかもしれない。死ぬというのは、ただそのサイクルの中に還るだけである。

・死は悪いものではない。暖かい人間は、暖かく死ねる。

・生と死というのは、コインの裏表のようなものではなく、濃度である。生きている時にも死にたい気持ちも存在するし、死のうとする時にも生きようとする気持ちは存在する。

・成功は積み過ぎると、輝きではなく、枷となる。肩書や地位によって、不自由を強いられることになる。そして、成功が失敗やスローダウンを許さない。

・成功は少し積んだら、すぐ崩す。

・真面目であることは、悪癖である。

・輝いていない人間とは、命が喜んでいない人間。命が喜んでいない人間とは、動いていない人間のことである。

・傷つくことも悪くない。多くの偉業はそういったコンプレックスを糧に成し遂げられた。

・最初から勝つ者や負ける者が存在している訳ではない。結果として、勝ちや負けが現れるだけである。

・負けてもいい。失敗の人生でもいい。

・「正しい人間」や「正しい人生」など少し考えれば、そんなものは存在しないことが分かる。

・世間の価値に囚われて停滞してしまうぐらいだったら、ダメ人間になってもいい。

・世間的な成功。すなわち、金・地位・名声・権力・称賛などは「人生そのもの」ではなく、「人生の飾り」に過ぎない。

・成否に囚われ、熱を失ってしまうことがいけない。失敗を恐れるな。人生の実(実体)とは、生きること(熱)そのものに在る。

 

非常に熱く揺さぶられるような部分もあるが、ドライな死生観や、成功に執着しない在り方、不真面目やダメ人間になることを厭わない思想は、ニート哲学に通ずるものがあり、自身の価値観にも大きく影響を与えたと考えている。

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