オフトゥン教のホームページ

―――はじめに布団があった。

オフトゥン教 現・当主よりあいさつ

(海外フリー素材サイト unsplashより)

みなさん、はじめまして。わたしの名前はアイ・マスク93世です。

信徒の方々からはグッドスリープさまと呼ばれることもあります。

代々より受け継がれてきた「オフトゥン」のおしえを、世界に広めて、永遠の平和が実現することを願っています。

 

―――オフトゥンのおしえ。

【せかいのはじまり】

世界の始まりには、2つのオフトゥンがあった。

それは、シキブトゥンカケブトゥンである。

シキブトゥンは父なる豊かさをもたらし、カケブトゥンは母なるぬくもりで、迷える人びとを包み込んだ。

人間の魂は、本来オフトゥンの中で永遠の安寧を得ていたのである。

 

【ねがえりの悲劇】

それでは、なぜ我々は「この世界に生まれてきた」のであろう。

それは、ねがえりと呼ばれる出来事のためである。

我々はオフトゥンのご加護から思わず、はみ出てしまい、この世に生まれ落ちたのだ。

 

【オフトゥンに帰依する】

そんな我々はどのように生きればいいのか。

それはオフトゥンに帰依することである。

オフトゥンを信じ、オフトゥンを模した「布団」と呼ばれる信具(しんぐ)に包まれることによって、死後にオフトゥンに還ることができるのだ。

 

―――信徒の生活。

在家の信者は、以下のおしえを守って暮らす。

 

【① 睡眠を第一に生きる】

我々はなんのために生まれたのか。

それは寝るためである。

信徒は「よく眠る」ことを常に心がけて生きなければならない。

 

【② 苦悩を背負い込まない】

ストレスや心配事が多々あると、睡眠にも支障をきたす。

そのような原因となるものごとからは距離を置かなければならない。

 

【③ 他者に思いやりを持つ】

例えば、あなたが暴言を吐くことによって、相手は「夜も眠れなくなる」かもしれない。

いかなる相手であれ、相手の安眠を妨げるのは戒律違反である。

 

【④ 世界平和の実現を】

国や社会がめちゃくちゃになってしまったら、私たちは「安心して眠る」ことができなくなってしまうだろう。

また、自分の国の人々だけがよく眠れればいいのかといえば、それは正しくないはずだ。

世界平和を実現し、誰もが平穏に寝れるようになったとき、現世にオフトゥンさまは顕現し、宇宙が完成するのである。

 

―――出家者の修行。

また、出家者たちは施設に集まって、毎日を修行に費やす。

以下が、その過酷なスケジュールである。

6時~7時

起床。簡単な食事と体操運動の時間が設けられる。

 

7時~12時

修行の時間である。出家者はそれぞれ自分の布団をひとつずつ与えられ、その上で修行を行う。

寝行とは、その名の通り、ひたすら横になることである。

ここで、注意したいのは、決してスマートフォンや漫画、お菓子やテレビなどの娯楽は認められないことだ。

そして、身体を動かすことも、最低限に済ませなければならない。

ただ、無言の半目でもくもくと天井を見つめる。

これが出家者の修行である。

別名、天井行(てんじょうぎょう)とも呼ばれ、高名なオフトゥン信徒は、「天井のしみに真理を見た」との言葉を残している。

 

12時~13時

昼食。メニューはごく一般的で質素なものである。

これはオフトゥン教の戒律に「豪華な食事は避けよ」とあるからだ。

それはなぜか? ぜいたくを追求すると、その分の労働負荷や悩み事が増加し、睡眠に支障をきたすからだ。

そして、更に言えば、食べすぎやジャンクフードは健康に害であり、健やかに眠れなくなるという事情もあるだろう。

なお、昼休みは身体をよく動かすものが多い。午後も寝行が続くからである。

 

13時~17時

お昼を食べた後は眠くなってしまいそうだが、ほとんどの修行者はここでは寝ない。

それは昼に寝ると、夜眠れなくなってしまうからだ。

ただ、心を無にして、横になるのである。

 

17時~19時

夕食と運動の時間。

そして、その後は風呂に入る。

 

20~21時

寝る前の祈りの時間。

ここで横になりながら、よりよく眠るために精神を統一する。

21時に消灯。これが出家者の1日である。

出家者たちの修行をイメージしたイラスト

 

また、出家者たちは以下のような行事を行っている。

【葬式】

オフトゥン教の在家信者の家で死者が出た場合、長年の修行を積んだものが家に出向き、死者が安らかに眠れるよう、棺桶の傍らで共に数時間ほど横になる。

親族も一緒に横になって祈る。

 

【荒寝行】

普段は布団や寝袋で寝るが、「私はどこでも寝れるほど、オフトゥンさまを信じている」という信仰心を試すため、過酷な環境で横になることがある。

多くの場合は岩場などで横になることが多いが、かの高名な信徒は「活火山の頂上で横になった」という伝説を残している。

 

―――Q&A集。

相談者:限界サラリーマン(男性・30代)さん

こんにちは。私はこれまで一生懸命やっていれば報われると信じて生きてきました。

ですが、毎日続くのは大して給料の上がらないハードな仕事生活と、孤独な都会暮らしの日々です。

ホントウの幸せって何なんでしょう??

お答えします。

あなたは、その通り本当の幸せを知らないのです。

多くの人々はステータスを手に入れれば幸せになれると思っていますが、そこでは終わりのない競争が続くだけです。

遠くを眺めているから気づかないだけで、幸せはすぐそばにあるのです。ただ、黙って横になればいいのです。

 

相談者:絶望くん(男性・20代)さん

社会ってマジでクソ。親ガチャの不公平社会。

生きる意味とかないわ。みんな死ね。

お答えします。

世の中は不公平なもの。それはおおむね正しいでしょう。

しかし、どんな人間も公平に得られると言われるものがあります。

それは「寝るよろこび」です。

あなたは社会の不条理さに気づいたからこそ、真理を悟るきっかけを得られたのです。

さあ、みんなで横になりましょう。それが真に実現すべき公平な幸せです。

 

相談者:棚戸キャビア(女性・30代)さん

はじめまして。わたしは昔から死ぬのが本当に怖いです。

死んだら永遠の無になることを考えると動悸が止まりません。

どうしたらいいでしょう。

お答えします。

大丈夫です。

死ぬことを「永眠」といいますが、まさしく、わたしたちは死んだら、「ずっと眠るだけ」なのです。

オフトゥンさまに帰依すれば、わたしたちは安らかなオフトゥンの中に還ることができるのです。

なにも心配はいりません。なにも恐れることはありません。

 

相談者:トクメイキボウ(男性・80代)さん

この前、余命半年を告知された。

もう長くないらしい。ベッドの上で残り時間を過ごす日々。

神仏のたぐいは信じてこなかったが、残された時間をこうもまじまじと示されると、死後について考えてしまう。

オフトゥンさんは、今からでも私のことを迎え入れてくれるだろうか。

お答えします。

オフトゥンさまはいかなる人物でも、その願いを受け入れます。

そして、そこに時間や地位は関係ありません。

それに、あなたは既に救われているのです。

あなたは、たった今もベッドの上でオフトゥンさまに包まれている。

ただ、そのことに気付けばいいだけなのです。

 

―――信具購入。

オフトゥン教に入信した方は、教団指定の布団セットを購入しなければなりません。

お値段は1,000,000円になります。

たまにクーリングオフなどと言い始める人がいますが、そういったよく分からない邪悪な言葉を発するのは戒律違反です。

それでは、あなたのご入信をお待ちしております。

 

(このページはフィクションである)

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